リプレイ11 探索者の拠点村 舞歌姫(アイドル)ルコ・ラインと舞台魔法演出家セツナ
探索者たちが拠点にする村。
村中では普段見慣れないヒトたちも見かけて、いつもより数段の賑わいを見せていた。
なんでも流浪の大人気舞歌姫(アイドル)ルコ・ラインがこの村で舞台(ライブ)を開くそうだ。
それを一目見ようとここを拠点にしている探索者以外も出向いてきたというわけだ。
「ルコちゃんのライブ楽しみだなー」
「俺、生舞台初めて見るよ」
村の話題はルコのことで持ち切りだ。
また、飲食店の店長・店員たちはルコ目当てできた客層も増えた客を捌くので大忙し。
これほど期待されている舞歌姫(アイドル)ルコ・ラインは。
「どどどどーしよ、セツナちゃん! ききき緊張してきたー」
ガチガチに緊張していた。
「だ、大丈夫。ルコ、いつも通りいつ通り」
ルコの緊張をほぐそうと必死になだめる少女はセツナ。
ルコの舞台を魔法で演出する舞台魔法演出家であり、ルコの友人でもあった。
「で、でもー」
「ルコ。私はルコが最後にはちゃんと輝ける子だって、今まで見てきたから。自信をもって」
「セツナちゃん……。うん、がんばるよ!」
可愛らしく意気込みのはな息を鳴らして、決意を新たにするルコ。
どうやら、落ち着いてきたようだ。
ルコは緊張しいだが、ちゃんと自身を鼓舞すればそれも跳ねのけられる少女だ。
セツナはそれを、一番近くで見てきた。
だからルコを信じて舞台に送り出すし、自分も魔法演出家としての最高の仕事をこなす。
それは、自分が信じたルコという偶像(アイドル)に最大限輝いていて欲しいから。
やがて時は過ぎて、ルコが今日の舞台に立つ時が来た。
すぅ、とルコが息を吸い込む。
「みんな! 今日は来てくれてありがとー! わたしの歌と踊りで、みんなが元気になると嬉しいな!」
沸き上がる歓声。
ルコにも、日々を懸命に生きる人々を、少しでも元気にしたいという信念がある。
その信念の前では、緊張など些細なことだった。
舞台に立つその瞬間だけは、ルコと、そしてセツナ、2人の少女たちは人々の心の太陽になるのだ。
「それでは見て、聞いてください! 最初の曲は『going the world』!」
力強いステップが、明るく前へと進むような歌声が、少女の道を照らすような魔法の演出が、あるいはそれら全てが観客たちを熱狂させる。
この舞台は間違いなく、成功と言ってよかった。
「ありがと! セツナちゃんのおかげだよ」
「ううん、ルコの実力」
舞台が終わり。
太陽のような笑顔でセツナに語りかけるルコ。
少し照れながらも控えめに返すセツナ。
「セツナちゃんの、おかげだよ?」
「え?」
ルコは初めてセツナに会った時のことを思い返していた。
蛍飛び交う泉で舞い歌っていたルコに、偶然それを見ていたセツナが言うのだ。
「あなたは、みんなを照らす太陽になれる」
その時は意味はわからなかったが、勢いにつられて舞歌姫(アイドル)を目指した。
今はその意味がわかる。
生活とは苦しいものだ。
その中でひとつの楽しみ・生きがいが必要になってくる。
それが舞歌姫(アイドル)という太陽なのだと。
「でもね」
と前置きしてルコは一言付け加えた。
「セツナちゃんも、わたしの太陽なんだよ?」
にこりと微笑むルコを見て、ボッ、とセツナの顔が赤くなった。
これは、舞歌姫(アイドル)ルコ・ラインの初めてのファンへ。
皆には内緒の秘密のファンサービス。
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