リプレイ5 探索者たちの拠点村 リザードマンの占い師・クリードの占い水晶探し
「はぁ」
探索者たちが拠点にする村のひとつ。
顔がトカゲの半人、リザードマンで占い師の男・クリードは深くため息をついた。
「今日も金返せって言われちゃったよ……」
水晶占いを始めて見たものの、占いはほとんど当たらない。
リザードマンの占い師といえば探索者たちの間で当たらないものの比喩とさえ使われる始末だ。
「水晶が行けないのかなぁ。もう少し強い魔法具なら、未来を見通せたり。エルマさんに聞いてみようかな」
「ああ、クリードさん。久しぶりです~。本日はどんなご用件で~?」
やけに間延びした口調で喋るこの若作りの男は、魔道具屋でエルフのエルマ。
やたらてきとーな接客態度だが、この村では唯一の魔道具屋なので訪れる魔法系の探索者は多い。
「やあ、エルマさん。ほら、ぼくの占いって当たらないじゃない? 新しい水晶を探して使ってみようかな~って」
さらりと自虐を混ぜて、クリードは水晶の魔道具が欲しい旨を伝えた。
それにエルマはん~、と目を細めて返した。
「うちでは時の先を見る魔道具は扱ってませんね~。私の仕入れ先、魔道具職人のオーマさんを訪ねてみては~?」
「なるほど、元を辿れってことかぁ。ありがとう、エルマさん、行ってみるよ」
控えめに手を振りながら別れを告げるクリードを見送って、エルマはぼそりと呟いた。
「魔道具の問題じゃなさそうですけどね~」
「ひゃ~。立派なとこだなぁ」
クリードは魔道具工房の看板を掲げる立派な建物を眺めていた。
クリードは背の高い方だが、それでもかなり顎を上に向けないと屋根付近は見えない。
「よ、よ~し」
クリードは意を決して、こんこんと魔道具工房の扉を叩く。
しばらくの間を置いて、がちゃりと扉は開きそこからオークの中年の瞳が覗いた。
「なんだ」
「あ、あの! 魔道具屋のエルマさんの紹介できました」
「……入れ」
魔道具屋エルマの名が効いたのか、どうやら受け入れてもらえたようだ。
「要件は?」
中年男オークの魔道具職人・オーマがぶっきらぼうにオーマが尋ねる。
やや雰囲気に飲まれつつも、クリードは自分の要件を伝えた。
「ぼく、占いをやっていて、でも当たらなくて……。それで、時を見通せる水晶が欲しいんです」
「ふむ。断る」
「ええ!?」
即決の拒否に、クリードも驚くが、オーマは言葉を続けた。
「魔道具は作ってやれないが、時を見通すすべは教えてやる」
「え!? 本当ですか!? それってどんな」
「とりあえず前を向くことだな。そして周囲を見ろ。お前はなぜわしと話せた?」
「それは、エルマさんの紹介で……」
「それだ。物事を成し遂げるにはある程度必要なことがらをしていく必要がある。思うに、それを示すのが占いなんじゃないか?」
クリードははっとした。
自分はそういった努力をせずに道具のせいにしていたのだ。
オーマの指摘で、やるべきことをやりもせず甘えていた自分が恥ずかしくなった。
だから、ここから変わろうと思った。
「ありがとうございます、オーマさん! ぼく、頑張ってみます!」
「おう、がんばれ」
オーマがにこりと笑った。
とある日から、少しずつリザードマンの占い師の占いは当たるようになっていき、それは探索者たちにも広まっていった。
いつの日か、当たらないものを指すリザードマンの占い師という比喩は使われなくなったという。
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