リプレイ8 宗教都市 承認欲求天使パパラとキメラ研究家ドワーフ・ドウラ
魔力の根源の内のひとつ・光の精霊。
その仮人格の神と呼ばれる存在。
さらにその下に枝のように分かれた複数の仮人格は総称して天使と言われる。
今、光の精霊を信仰する天界信仰都市の礼拝堂には、天使がいた。
「みなさん、頑張ればなんとかなります」
「おおおおおお!」「天使様のお言葉!」「頑張ります!」
光の輪、白いドレスに白い羽根。
地上に舞い降りた天使パパラが言った浅いセリフは信者たちに勝手に神託と解釈されパパラを持ち上げる。
それがパパラのちやほやされたいという願望を満たすのだ。
欲求が満たされたことでにやけそうになる顔を天に上げ祈りのポーズを捧げる。
それをまた、信者たちがもてはやした。
「いやー、信者の人たち、ちやほやしてくれるから大好き」
しばらくして、宗教都市の街中でパパラが昼食をとる店を探していると、その様子を見る影があった。
「……うーん。付きまとい? まぁ、わたしが可愛いから追っかけも出るのはわかるけどさー」
パパラは自分の容姿の可愛さに自信があった。
実際、幼い少女のようなその外見はそういった趣味の人に人気が出るだろう。
しかし、付きまとわれるのはあまり気がいいものではない。
どうせなら正面切ってちやほやしてほしいものだ、とパパラは人影を撒くことにした。
ふわりと羽根を広げて、滑空するように街を移動するパパラ。
器用に人を避けて、街中を飛ぶが、なかなか付きまといの影を撒けない。
むしろ、近づいてさえいるような。
「むむー。しつこいなぁ。そろそろごはんも食べたくなってきたし」
ぐぅ、とパパラの腹が鳴った。
元々、昼食の店を探していたのだ。
それを思い出した途端、少し力が抜けてしまった。
「ほあああ!!」
人影が、パパラの上に跳んだ。
そして落下の勢いのまま、パパラを地面にたたきつける。
「ぐえ!」
「むほほー! 天使の羽根確保ー!」
「ぎえええ!?」
パパラの背中に生えた羽根のいくつかが、人影の主・ドワーフの中年にぶちぶちとむしられる。
パパラはむちゃくちゃ痛がった。実際羽根をむしられるのはとても痛い。
「ストップ、ストップ!!」
「はっ、しまった。これは失敬、天使様」
「で、キミはなんなのさ」
不機嫌に口を尖らせて、パパラはドワーフ中年の正体を尋ねた。
ドワーフ中年はよくぞ聞いてくれたとばかりに鼻息を鳴らし、声高に語り始める。
「私の名はキメラ研究家のドウラ!! 最強のキメラを作るため日々素材集めと合成の日々! 私の最強キメラが完成する日も近い!」
「えーと、つまりキミは、わたしの羽根を使ってその最強のキメラってやつを創ろうとしている?」
「さすがは天使様、理解が早い!」
「逆に馬鹿にしてるでしょ。天使じゃなくても理解できるわ」
パパラは悩んだ。
だいぶこのドウラというドワーフ、パパラの上司であり光の精霊のペルソナ主人格・神に目をつけられることをしている。
神に報告するべきか、否か。
悩んだ末パパラが出した結論。
「めんどくさいから放置でいっかー……。じゃあ、もう毟らないでよ、キメラの人」
「おお、ご協力感謝します。”男”の天使の人」
「え」
なんでバレたんだろう、と思いつつもう昼食を食べる気分でもなくなってきたのでパパラは宗教都市を後にした。
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