リプレイ6 世界樹 調査隊ギルド 積極派ハーフリンクイーゴと慎重派オークのオード
天まで高く伸びる大木、世界樹。
そこでは独自の生態系が形成されており、さながらひとつの森のようだ。
調査隊ギルド、ハーフリンクの男イーゴとオークの男オードはその調査に来ていた。
「わっ、マヤカシコオロギ」
「オード、ぼさっとすんな!」
オードが見つけたコオロギのような魔物をイーゴが取手の先に半円状の刃がある武器・チャクラムで切り刻む。
マヤカシコオロギの奏でる音色は幻覚作用がある。
そのため、イーゴは素早く攻撃に転じたのだ。
「ごめんよ、イーゴ。でも、慎重にいこうよ~」
おどおどとオードが控え目に提案する。
それはいつもせっかちなイーゴに突っぱねられるのだ。
「ガンガンいかないと日が暮れちまう! 行くぞオード!」
「イーゴ~」
結局、積極派と慎重派の調査隊ギルドの決定方針は押しが強い積極派のイーゴにゆだねられてしまう。
世界樹の幹を登ること数刻。
イーゴがチャクラムによる斬撃で道を切り開き、オードが生態系の資料メモを書き込んでいく。
彼ら調査隊ギルドの役目は、他の探索者に危険地域の情報を提供すること。
どのような危険があるかわかれば、探索者は回避あるいは対処法を考えて、命の危機から脱することができる。
そのために調査隊ギルドは未踏の地を踏み進むのだ。
「幻影コオロギとマヤカシキリギリスか~。幻惑系の魔物が多いのかな」
「オード!」
また、イーゴが急かした。
オードも慌てて彼の後を追う。
「もう、イーゴは本当にせっかちだなー」
「オード、見ろよ、花だ!」
イーゴが指さした方をオードが見れば、なるほど確かに綺麗なピンク色の巨大な花が咲いていた。
イーゴはこの時花の美しさに見とれて気づいていなかったが、注意深いオードはピンクの巨大花からかすかに違和感を覚えていた。
なので、とっさに魔法の杖を使ってイーゴの傍に防壁を張った。
その防壁が叩かれて、金属が打ち合うような激しい音が鳴った。
「イーゴ、離れて!」
「お、おう!」
ピンクの花の正体。それはフラワーマンティスと呼ばれる、花に擬態するカマキリの魔物。
どうやら、綺麗な花に化けて油断した探索者の命を刈り取るようだ。
オードの魔法壁に守られたイーゴはフラワーマンティスから距離を取りチャクラムを構えなおす。
「イーゴ、ぼくがあいつの注意を引き付けるよ! その内に攻撃を」
「大丈夫かよ、オード!」
「イーゴのこと、信じてるから」
「……わかったよ!」
「はぁっ!」
オードが炎の火球を創って、それをフラワーマンティスの頭にぶつけた。
しかしそれだけでは威力は弱く、倒すまでに至らない。
フラワーマンティスは攻撃元のオードに向いて、鎌を振り上げた。
そこへイーゴのチャクラムの刃の軌道が伸びる。
「俺様の相棒に手ぇだしてんじゃねぇ!」
チャクラムの斬撃を食らったフラワーマンティスの首が、ざっくりと吹き飛んだ。
ばたりと残った身体が倒れて沈黙する。
「やったね、イーゴ」
「お前のサポートのおかげだよ、オード!」
調査隊ギルド2人は脅威を退けたことを喜びハイタッチを交わした。
「悪かったよオード」
「え?」
「その、さっきのは俺がうかつだった。お前のいう慎重さも必要だ」
「うん。だけどぼくはイーゴがいなかったら、調査に出る勇気がないんだ。だから、積極さも大事だと思う」
「なるほどなぁ! どっちも大事ってことか!」
「そうだね」
「でもまぁ、今日のとこは腹減ったし帰るか!」
「賛成!」
調査隊ギルド。本日の成果。
世界樹にて幻影コオロギやマヤカシキリギリスの存在を確認。幻惑の音色に注意されたし。
また、フラワーマンティスが擬態している可能性があるピンクの花には要注意。
夕飯はおいしかった。
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