リプレイ15 滅びた村 バカップル探索者ヴェルデイとリア、恋探しのエルフ・ラル
かつて、そこには村があった。
今や滅びたそこでは住民たちの無念が魔物となって化けて出ている。
そんな滅びた村の中に生きた者の影が3つ。
「きゃー、こわーい!」
「あんまりくっつかないでほしいんだが……」
「むむー」
探索者でパートナー同士の男戦士・ヴェルデイと女魔法士リア・シール。
それと今回の同行者エルフの女性・ラルだ。
このラルという女性をリアは警戒していた。
やたらヴェルデイとの距離が近いのだ。
その距離は私のものなのに、と頬を膨らませる。
ちらりとリアの視界に、こちらを見るラルの表情が映った。
にやりと笑うその顔は、明らかに悪意がある。
「ヴェールデイ♡」
ならば渡してなるものかとリアもヴェルデイとくっついていちゃいちゃするのだ。
「リアまで。さすがに動けないんだが」
両手に花、などといえば聞こえはいいが戦士が両手を封じられては死に体だ。
申し訳ないと思いつつ、ヴェルデイは二人の腕を振りほどく。
「俺が先に行くから、ついてきてくれ」
「はーい」
後ろの2つの返事を返した当人たちの視線の間でバチバチと火花が交わされていることを、ヴェルデイは気づいていなかった。
魔物は無念の住人だけではない。
かびの生えたきのこのような魔物は村が朽ちていき、放置された様を象徴するかのよう。
この魔物自体の強さはたいしたことはないが、気持ちが暗くなるような見た目ではある。
このかびきのこだけに限らない。
滅びた村は住人がいなくなり使われることのなくなった椅子などの家具すらも魔物化し、探索者に襲い掛かる。
それでも、探索者の基本は変わらない。
前衛である戦士・ヴェルデイがどこぞの商人にお高く買わされた手甲で切り込み、後衛の魔法使い・リアとラルが攻撃や支援系の魔法でサポートする。
ヴェルデイとリアは探索のパートナーとして長いこと一緒にいるが、ラルとの連携もなかなかのものだ。
基本的に協力が必須な探索者という者たちは、初見の相手ともある程度息を合わせることができる。
滅びた村の雰囲気が漂わせる嫌な空気はあるものの探索自体は順調だった。
広間。
かつて村人たちの交流に使われていたのだろうか。
地面にカビや粘糸が生えたその中央に鎮座する不自然な鏡、
まるでそこだけ切り取った時代が違うかのように、鏡は傷ひとつ汚れひとつ見られない。
「マジックアイテムの類かしら」
「あ、おい。不用意に近づくな」
軽率に動いたラルに注意を促しながら警戒して鏡の元へ向かうヴェルデイ。
それにリアもついていく。
鏡にはなぜか一番前にいたラルの姿は映ってなかった。
代わりに移しだされるのはこれでもかといちゃいちゃするヴェルデイとリアの姿。
その2人の世界には他の不純物・ラルはいらないとでも言っているかのよう。
それにラルは無性に腹が立った。
「キー!!」
だから、拳で”真実を映しだす鏡”を叩き割った。
「帰ります!」
「お、おい!」
すたすたと、気を悪くしてラルが来た道を引き返していく。
困惑するヴェルデイだったが、その後ろでリアが安堵のため息をあげていた。
「そうだよね。ヴェルデイの隣はわたしのだよね……」
「リア?」
「あ、ううん、なんでもないよ。いこ、ヴェルデイ」
またリアがヴェルデイの腕に抱き着いた。
今度はヴェルデイも腕を払わない。
魔物が片付いた今ならこの形が、ヴェルデイとリアの”普通”だから。
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