リプレイ18 錬金術ギルドとヤク中薬師ポール

  錬金術ギルド。

 そこでは物質と物質を混ぜ合わせ、異なる性質に変える錬金術という秘術を研究する代わりものの集まりだった。


「ふおおお! この前はぎ取った天使の羽根と、ある火山に住むという火の鳥を混ぜ合わせぇ! わしの最強のキメラを作るのじゃぁ!」


 釜になにやら怪しげな素材を入れるのはギルドマスターにしてキメラ研究家のドワーフ・ドウラ。

 どうやら最近珍しい素材が手に入ったということでさっそく合成獣・キメラの作成に精を出しているようだ。


「ギルドマスター、その内あたしの鱗が欲しいとか言わないでくださいよー?」


 水槽に下半身の魚の尾を漬からせながら、引き気味にドウラの様子を見るのは人魚のレーマ。

 彼女は彼女で、陸上では不便な魚の下半身を人間の足に変える薬の開発・改良に勤しんでいる。


「いや、人魚の鱗は弱そうだからいらん」

「キー! それもなんかむかつく」


 錬金術ギルドの面々は研究内容が研究内容だけに周囲から奇異の目で見られている。

 そんな錬金術に訪れるのはよっぽど要件持ちか、彼らに劣らない変人だ。

 今回扉を勢いよく開け放ったのは、後者の人種。


「うぃー! やってるかーい!?」


 なにやら怪しげな葉っぱを口に咥えて貪りながらやってきたのは、エルフで薬師のポールという男性。

 若い見た目が特徴のエルフにしては、人間の30代くらいとやや老け気味。それでも若いという分類には入るだろうが。


「げっ、ポールさん」

「見るからに嫌そうな顔するなよ、レーマ。ほれ、気持ちよくなる葉っぱ、食う?」

「それエグい副作用つきでしょ」

「こんなのが薬師なんだから世の末じゃわい」

「うるせー、ドウラには言われたくねー」


 酔っ払いともその手のあれな類ともわからないような足取りで、ポールは勝手にギルドの設備を使い始める。


「ポールさん、今日はどっち?」


 レーマがポールにどっちか、と聞いたのは彼がこの設備を使う時の目的が2つあるからだ。

 1つは今咥えているような”気持ちよくなる”薬草の調合。

 もうひとつは。


「残念ながら、仕事の方だよ」


 まっとうに、怪我や病気を治す方の薬草の調合。

 完全に終わってる目をして時たま幻覚も見るが、ポールは薬師としては紛れもなく優秀だった。

 曲りなりにもギルドマスターのドウラが設備を無償で貸しているのもそのためだ。


 会話を終えて、3人は3人それぞれの作業に入る。

 もっとも。


「さいっきょキメラ! さいっきょキメラ!」

「あー! 配分間違えたぁ!」

「うおお、ヤクが足りねぇ!」


「お前らうるせー!!」


 3人が3人とも騒がしいので、錬金術ギルドはいつもご近所に騒音迷惑をかけていたのだった。

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